〈つくし採り〉
小中高と、つまりは「子供時代」の大半を過ごした家の隣には、草生い茂る空き地があり、常に僕らの良い遊び場となっていた。
特に気に入ってたのは冬のトンネル遊びで、これは立ち枯れた草の根元をかき分け、道路を造って遊ぶものだったが、夢中になって遊んだあと気がつくとセーターがオナモミだらけになっていたりして、その度ひどく怒られた。
そんな空き地で年に一度行われる宝探しが、土筆採りだった。いつの間にやら生えてくる、葉のない奇妙なその草を僕らは競って採り合った。宝探しに危険はつきもので、僕にとっては何の前触れもなくバッタリ現れる冬眠あけのカエルがそれだった。近所にそのカエルを平気でつかむ小さい女の子がいて、その時ばかりはその子の存在自体が恐ろしく、逃げ回ったのを憶えている。
集めた宝物は袴を取ってから、母がまとめて佃煮にした。苦くて子供の口にはあまり合わなかったが、いつか春が来るたびにあの味を懐かしむようになるのだろうか。
〈画・文/初出「都政新報」1997年4月11日号〉