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季節の便りをお届けします
多少ずれるのはご愛嬌。


2007.03.01

〈炬燵舞台〉

 こたつ布団のその奥に、かつて無限の舞台があった。
 闇夜にも似た暗がりに、赤い光が灯る時、
役者にあわせて姿を変える、秘密の舞台が現れた。
 ビニール人形連れたときには、舞台は四角いジャングルに。
 赤いミニカー走らすときは、タタミの縁が道路になった。
 兄が帰ってきたときなどは、意味なく中によく隠れてた。息をひそめて笑みなど漏らし脅かす機会をうかがうときは、小さな秘密基地だった。

 冬の楽しみだった、誰も知らない劇場に年齢制限があることを知ったのは、すべり込むと膝がつかえるようになった頃だったろうか。
 今でもこたつを出す日には時々思う。
 大人も中で楽しめる、そんな規格のこたつが欲しい。

〈画/2003年制作、文/2007年〉



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