こたつ布団のその奥に、かつて無限の舞台があった。
闇夜にも似た暗がりに、赤い光が灯る時、
役者にあわせて姿を変える、秘密の舞台が現れた。
ビニール人形連れたときには、舞台は四角いジャングルに。
赤いミニカー走らすときは、タタミの縁が道路になった。
兄が帰ってきたときなどは、意味なく中によく隠れてた。息をひそめて笑みなど漏らし脅かす機会をうかがうときは、小さな秘密基地だった。
冬の楽しみだった、誰も知らない劇場に年齢制限があることを知ったのは、すべり込むと膝がつかえるようになった頃だったろうか。
今でもこたつを出す日には時々思う。
大人も中で楽しめる、そんな規格のこたつが欲しい。