いつのことかは忘れたが、毎年同じようなことをしていた気もする。
夏休み最後の日、僕はたまった絵日記の束を前に途方にくれていた。
まったく夏休みの宿題のうち、読書感想文と並んで日記ほど苦痛なものはなかった。どんなに楽しかった出来事も、紙一枚になったものを見返すと途端に色あせて思えてくる。そもそも子供はその日あったことなど振り返らない。僕に関していえば、楽しくなかったことなど振り返りたくないし、本当に楽しかったことは人には内緒にしたい、つまりはきっと、ケチだったのだ。
とはいえ明日までになんとか原稿用紙のマス目をうめねば先生にあわせる顔がない。
僕は口にしていたスイカの種をマス目にそって並べはじめた。ところが、食べるときにはあれだけ多いと思っていた種も、目の前の原稿すべてを埋めることはできなかった。
旬を過ぎ、幾分スカスカになったスイカの味が、夏の終わりを物語っていた。
(初出/「都政新報」1997年9月30日号)