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07.02.08 Debut!
第21話
「道場に伝わる伝説」


「入ってきた新人が、ある日突然いなくなってる。
 なんてことはよくあるよな。」
「キツい練習に耐えられなくなって、逃げ出すんだろ。
 俺だって何度そうしようと思ったか。」
「それもあるけど、
 そればかりでもないみたいなんだ。」
「どういうことよ?」
「消えたやつの中には逆に練習が好きで好きでたまらないやつも
 いたってことよ。」
「じゃあそいつは、どこに行っちまったんだ?」
「いや。それが実はどこにも行ってない。
 みんな。関節技の練習とかずっとやってると、
 どこからどこまでが自分の手か足か、
 わからなくなっちまうことって、あるよな?」
「いわれてみれば……」
「普通はみんなそのくらいでやめるけど、
 そいつらはそこからまた更に続けるんだ。
 そうするとだんだん本当にどれが誰の手足か分からなくなって…
 最後には固まって一人になる、」
「ウソだー!」
「ウソじゃねえよ。現に今トップにいる連中。
 みんなもともと2、3人だったらしいぞ。強えわけだよ。
 それに……」
「なんだよ。まだあるのかよ。」
「うちの社長、もとは5人だったって。」
「……」
「……」
「そういやあの新人、今朝から姿見せないよなあ。」
「まさか……」



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